『ルー=ガルー』
ネットワークが整備され、モニタの中の仮想現実で生活のほぼ全てがまかなえる近未来。実際に他人と接触する機会の少なくなった子供達のために、カウンセリング等を行う学校に代わる機関が設立されていた。14歳の牧野葉月も多分に漏れず、現実の他人との接触＝リアルコンタクトに慣れていない。そんな彼女が連続少女殺人事件に巻き込まれ、破天荒な友人達と共に事件の真相に迫る。
物語は葉月達４人の少女を視点としたパートと、女性カウンセラーと中年刑事のコンビを視点としたパートでそれぞれ進んで行く。主要登場人物は14歳なんだけれど、人格設定が京極堂だったり榎木津だったり関口だったりするわけで、その辺の書き分けが難しいところなのかな。それに、世界観を一般読者から公募するという試みは面白いと思うのだけど、その採用数が多ければ多いほど逆に一般的になってしまうような気がする。私的にはありがちな世界が描かれていると感じた。どちらかというと、世界観や登場人物の設定など、今流行のライトノベル的なところがあるかな。
ただ、京極夏彦氏の別の可能性、という点では面白いと思う。彼の文体はどうしても京極堂のシリーズのような、おどろおどろしい世界にピッタリだと感じてしまうから。そういう先入観を打破するためにも様々なジャンルで活躍して欲しいと思う。
