読書感想記

『逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成<F>』

大森望 編 (東京創元社 創元SF文庫) 『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>』と対を成すアンソロジー。こちらは前巻に比べて、「すこし、ふしぎ」系のSFを集めたとのこと。だから、ストレートなSFとはちょっと違う感じ。 「ある日爆弾が落ちてき…

『虚空の旅人』

上橋菜穂子 (新潮社 新潮文庫) 隣国サンガル王国の新王即位の儀式に参列するためにシュガと共に彼の地へと赴くチャグム。そこで彼は<ナユグ>に魂を奪われた少女と出会い、過去の自身の出来事から彼女を助けたいと考え始める。一方で海運国であるサンガル…

『ココロコネクト キズランダム』

庵田定夏 (エンターブレイン ファミ通文庫) 謎の存在<ふうせんかずら>によって引き起こされた、文研部内での「人格入れ替わり」現象。その終焉から3週間が経った頃、またしても<ふうせんかずら>が彼らの前に姿を現す。今度は「欲望解放」。文研部5人…

『ハーモニー』

伊藤計劃 (早川書房 ハヤカワJA) 身体の中に入れられた医療分子。それは体内から人の身体に関する情報を収集しサーバーに送ることで、人の健康を管理する。そのおかげで病気はおろか、ちょっとした頭痛や風邪、肥満などといったものですら撲滅され、「死」…

『マルドゥック・フラグメンツ』

冲方丁 (早川書房 ハヤカワJA) これまでに発表された短編に加え、第3部として刊行される『マルドゥック・アノニマス』に関連した短編と、著者インタビュー等を含む短編集。 ズルイ。インタビューを読んだら、完全版も読みたくなっちゃうじゃないか。『〜…

『夢の守り人』

上橋菜穂子 (新潮社 新潮文庫) 眠ったまま目を覚まさない姪のもとを訪れるタンダ。しかしその原因はわからず、一方で王宮の一の妃も同じような症状にあることが知らされる。そしてその症状はついにチャグムにまで…。その頃バルサは山中で人買いに追われて…

『ココロコネクト ヒトランダム』

庵田定夏 (エンターブレイン ファミ通文庫) 山星高校1年生から成る弱小部、文化研究部。そこに所属するのは部長の永瀬伊織を始め、稲葉姫子、八重樫太一、青木義文、桐山唯の5人。ある日彼らの間で人格入れ替わり現象が起きる。混乱に陥る彼らの前に現れ…

『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>』

大森望 編 (東京創元社 創元SF文庫) 以前ハヤカワから出た『ゼロ年代SF傑作選』はゼロ年代を象徴するような作家さんの作品を集めた、という感じのものだったが、こちらはゼロ年代に発表された作品の中からこれぞというものを集めた、という感じ。だからち…

『そして、警官は奔る』

日明恩 (講談社 講談社文庫) 蒲田署に異動となった武本は、監禁されていた外国人幼女を助けたことがきっかけで、未成年の人身売買事件を追う。その過程で知る不法入国者とその子供を助ける人の存在。一方でキャリアとして復帰することの決まったかつての相…

『闇の守り人』

上橋菜穂子 (新潮社 新潮文庫) チャグムとの関わりから、養父の自分に対する想いを再認識し、自分の過去に向き合う決意をしたバルサ。実父、養父、そして自分が巻き込まれた故郷での陰謀を清算するために生まれ故郷であるカンバル王国へと足を踏み入れる。…

『精霊の守り人』

上橋菜穂子 (新潮社 新潮文庫) 女用心棒バルサは橋から転落した皇国の第二皇子チャグムを、偶然助ける。それをきっかけに皇妃からチャグムに関する良からぬ策謀を聞かされ、彼の護衛を引き受けることになるが…。 児童文学という括りではあるが、大人が読ん…

『ゆらぎの森のシエラ』

菅弘江 (東京創元社 創元SF文庫) 塩を含む濃い霧が立ちこめ、異形の怪物が徘徊する森。付近の村人たちは怪物を恐れながらの生活を強いられたいたが、守護神リュクティの出現に精神的に救われ、彼女の像を建立することに。そんな折、自我に目覚め創造主への…

『武士道セブンティーン』

誉田哲也 (文芸春秋社 文春文庫) 九州は福岡の武道強豪校へと転校した西荻早苗。これまでとは異なる練習風景に戸惑いを憶えつつも剣の道を進む。一方、東松の中核へと成長した磯山香織は後輩指導に余念がなく…。離ればなれになった二人はそれぞれの道を歩…

『晩夏に捧ぐ』

大崎梢 (東京創元社 創元推理文庫) 信州のとある老舗書店に勤める元同僚から成風堂に届いた手紙。そこには書店に現れる幽霊事件を解決して欲しいと書かれていた。俄然興味を抱いた多絵と、幽霊はともかく書店が好きな杏子は一路信州へ。 成風堂書店事件メ…

『名前探しの放課後』

辻村深月 (講談社 講談社文庫) 郊外型ショッピングモールの屋上で、依田いつかは違和感に気づく。その違和感は自分が過去へ3ヶ月だけ戻ったらしいということ。彼ははっきりと記憶していた。その3ヶ月の間に起こる同級生の自殺。しかし名前を忘れてしまっ…

『ミミズクと夜の王』

紅玉いづき (メディアワークス 電撃文庫) 村で奴隷として虐げられていた少女は死を望み、魔物の棲む森へ足を踏み入れる。そこで出会った、月の光を放つ眼と美貌を持つ夜の王。少女は彼に食べられること を望むが、王はそれを拒む。それでも少女は王につい…

『アイアン・サンライズ』

チャールズ・ストロス (早川書房 ハヤカワSF) 恒星破壊兵器により太陽は超新星化し、惑星モスコウの住人は消滅した。その衝撃波から逃れるべく近隣のコロニーから避難する宇宙船の中にウェンズデイは、居た。しかしモスコウ滅亡の裏にある陰謀に関する書類…

『ポーの話』

いしいしんじ (新潮社 新潮文庫) 黒い泥の流れる川。そこでうなぎを獲るうなぎ女から、ポーは泥の中に産み落とされた。泥の中を自在に泳ぎ回るポーはうなぎ女たちから母親の愛情を受け、成長する。そんなある日、街を500年に一度の大雨が襲い、ポーは住み…

『イニシエーション・ラブ』

乾くるみ (文芸春秋社 文春文庫) 大学生の鈴木は合コンで一人の女性と知り合う。彼女、成岡繭子に彼は夢中になり、付き合うことになるのだが…。 おもいっきり恋愛小説。ただし、読み終わると絶対もう一度読み返したくなる、という噂の作品。読みながらも「…

『ゴールデンスランバー』

伊坂幸太郎 (新潮社 新潮文庫) 地元仙台でパレードを行う首相が何者かによって暗殺される。その日のうちに容疑者として名前が挙がったのが青柳雅春。しかし彼にはそんな記憶は全くない。濡れ衣を着せられ、巨大な組織から彼は逃走を開始する。 映画を先に…

『大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝』

茅田砂胡 (中央公論社 中公文庫) 『デルフィニア戦記』舞台の5年程前、ナシアスとバルロの出会いと友情を描きながら、『デルフィニア戦記』前史とも言うべきウォル登場までの国内情勢をも描く。 いやあ、久しぶりにデルフィニアの世界に触れた。ナシアス…

『アイの物語』

山本弘 (角川書店 角川文庫) AIに支配され、ヒトの数も少なくなった未来。人類の敵とAIを憎む青年は一体の女性型アンドロイドと出会う。彼女は物語を語る。AIとヒトの在り方について綴られた物語を。そしてAIとヒトの辿ってきた真実の歴史を…。 短編7つと…

『告白』

湊かなえ (双葉社 双葉文庫) ある中学の一学期終業直前。1年生の担任の子供がプールで死体となって発見される。警察では足を滑らせてプールに落下した故の事故死であると断定されたが、母親である担任は終業式の日、クラスの生徒たちの前である「告白」を…

『すたーらいと☆ぱ〜ふぇくと!』

火浦功 (朝日新聞社 ソノラマノベルス) 既刊の『すたーらいと☆だんでぃ』『すたーらいと☆こねくしょん』『すたーらいと☆ぱにっく』と新作読み切り2編を含む合本。新作と言っても書籍化されていないってだけで、書かれたのは随分前なんだけどな…。 連邦移…

『ゼロ年代SF傑作選』

大森望 編 (早川書房 ハヤカワJA) 近年の活躍著しい日本SF作家のアンソロジー。『マルドゥック・スクランブル』の外伝目当てで購入。 いつも思うのだが「ゼロ年代」とはなんぞや? わざわざ区別しなくてはいけない程特別な年代なのか? いやでもこれが「90…

『ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選』

大森望 編 (早川書房 ハヤカワSF) 時間SFのアンソロジー。 いやあ、どれも味があって大変素晴らしい。やっぱり時間ものは楽しいなあ。 チャンの新作が読めたのも嬉しい。『千夜一夜物語』風のなんとも味わいのある作品。他にはプリーストの『限りなき夏』…

『クジラの彼』

有川浩 (角川書店 角川文庫) 『空の中』『海の底』の後日談を含む、自衛隊絡みの短編集。そして全てが恋愛もの。甘さ控えてません。 三部作を読んできた身としては、やっぱりスピンオフ作品は気になるもの。でもまだいいか、なんて思っていたのだが書店で…

『海の底』

有川浩 (角川書店 角川文庫) 米軍横須賀基地で開かれる桜祭。その最中に突如として巨大な甲殻類が群れを成して上陸し、人々を襲い始める!停泊中の海上自衛隊所属の潜水艦に辛くも逃げ込んだ子供たち13人と乗員2名。巨大甲殻類の対処に追われる警察組織と…

『陽気なギャングの日常と襲撃』

伊坂幸太郎 (祥伝社 祥伝社文庫) 前作から1年後。4人それぞれにスポットを当てた短編と、そこに端を発する事件。銀行強盗の最中に出くわした誘拐事件。被害者を救うべく4人は動き出す。 もともとは短編が存在し、それに加筆訂正を行った結果、このよう…

『陽気なギャングが地球を回す』

伊坂幸太郎 (祥伝社 祥伝社文庫) それぞれに特殊な能力を持つ4人組の銀行強盗集団。無事(?)仕事を終えた彼らだったが、逃走中に偶然別の強盗団と出くわし、まんまと車ごと現金を奪われてしまう。現金を取り戻すべく、追跡が始まる。 4人の特殊能力と…