『重力ピエロ』

重力ピエロ (新潮文庫) 伊坂幸太郎 (新潮社 新潮文庫
連続して起こる放火事件。その規則性を見いだした弟、春から自身の勤める会社が次のターゲットであるかもしれないと知らされた泉水。実際に放火事件が起き、規則性を知らされた泉水は、癌で入院している父親も巻き込んで連続放火事件を追うことになる。その先に家族が見出す真実は…?


家族の物語。氏の作品はスタイリッシュであると評価されることが多い。どういうのをしてスタイリッシュと言うのかは良くわからないが、氏の登場人物たちは飄々とした会話を交わす。こくいうスタンスがスタイリッシュなんだろうか。しかし「本当に大事なことは軽く伝える」という趣旨の言葉通り、その飄々とした態度の中にも家族への愛情といった、大事なことが現されているのだと思う。表現としては舞城氏の『煙か土か食い物』とまるっきり逆になるわけだけれど、伝えたいことは同じじゃないかな。何より父親が素晴らしい。そんな父親になりたいものだ。


ちなみに氏の作品にはこれまでの作品の登場人物が出てくることが多いのだが、今回も『オーデュボンの祈り』と『ラッシュライフ』からそれぞれ出演している。特に後者は物語にかなり絡んでくる。というわけで、初期の作品から追っかけているファンにはまた別の楽しみも用意されているわけ。