『七回死んだ男』

七回死んだ男 (講談社文庫) 西澤保彦 (講談社 講談社文庫)
高校生の久太郎は特異な体質を持つ。自分の好むと好まないとに関わらず突然時間の「反復落とし穴」に入り込んでしまうのだ。正月、祖父が会長を務める会社の後継者問題に揺れる親族が一同に会した屋敷で、件の祖父が謎の死を遂げる。そして真にその日、久太郎は「反復落とし穴」に落ちてしまう。これを利用して彼は祖父を助けようとするのだが…。


これまた時間もの。主人公の言う「反復落とし穴」というのはきっかり24時間前に戻り、しかもそれが必ず9回繰り返されるという代物。ただしこれは特異体質という扱いなので科学的考証等はなし。ミステリーを書くための小道具って感じかな。解説にもそんなふうに書いてあった。
「反復落とし穴」が9回繰り返されるということは7回は試行が可能なわけだが、主人公がどう立ち回っても必ず新たな別の犯人候補が現れ、祖父は死んでしまう。これが面白い。どうしても死なせたいんか。一人称の文体もあって割とコミカルな感じ。財産相続を巡る家族間の攻防はドロドロになりがちなんだけど、文章のおかげでそういう印象は薄い。サクっと読めます。謎解きも面白いし。