『邪魅の雫』

邪魅の雫 (講談社ノベルス) 京極夏彦講談社 講談社ノベルズ)
江戸川、大磯、平塚と毒殺死体が次々に発見される。警察は連続殺人事件として捜査に当たるがその甲斐むなしく事件は続く。


邪なものは誰の中にでもある。もちろん私の中にも。それが表に発現するかどうか。それを後押しするきっかけがあるか。ま、そんなきっかけ欲しくないけどね。


今回関口が多くを語る。いや、人嫌いとか猿とか犯人顔とか散々言われていて随分と不当な扱いを受けている彼だけど、実は一番感情移入できるのが彼だったりするわけ。多分私にも人が苦手な気があるからかな。というか面倒くさいと言うか。あまり他人に関わると情が移ってしまうでしょ。そうすると放っておけないというか。関口は「人は鞄だ」と言う。お気に入りはずっと使っていたい。でも鞄をずっと持っているわけにはいかず、稀にはうっとおしいとも思う。しかし鞄にも嫌われたくはない。とすると全てを投げ出したくなると。なーんか気持ちわかるなあって感じ。
作品としては相変わらず構成が上手いなあと思う。それぞれの章が「死」「殺」で始まる統一性も良い。しかしあらすじの「あの男」から『塗仏の宴』の「あの男」を想像してしまったので「彼」が出てこなかったのが少々残念。次作に期待。