『Q&A』

Q&A (幻冬舎文庫) 恩田陸 (幻冬社 幻冬社文庫)
都市郊外の大型ショッピングモールで死傷者多数の大事故が起こる。しかし当事者達の談によるとその原因は事故なのか事件なのかはっきりしない。火災なのか、劇物の散布による事件なのか。果たして原因は?


『Q&A』というタイトルの通り、会話のみで話が展開する。初めは当事者達へのインタビュー。そして直接間接にかかわらずこの事故(事件?)に関わった人々との会話が続く。
出版当時から会話のみで進むというスタイルが興味深くて文庫化されるのをずっと待っていた。


日常生活の中で大きな事件や事故など、ニュースや新聞で目にする機会は非常に多い。だがメディアを通して見たそれは余程のことでない限りは他人事。所詮想像することしかできない。それでも最近は家族ができたから想像力が豊か(?)になり、そんな事件や事故に巻き込まれたら、と思うといてもたってもいられなくなる。といったってやっぱり当事者達の気持ちは到底理解できないのだけど。
つまり、他人事に思える事件や事故にだって当事者がいて彼らにももちろん人生があり、楽しいことや辛いことがたくさんあるってこと。当たり前なんだけどそんなことを改めて考えさせてくれる作品。
会話形式だけで進む展開も面白いし、それだけでそれぞれの当事者達の人生を浮き彫りにする技術もすごいと思う。しかしながら着地点がいまいち。氏はどういう話として終わらせたかったんだろうか?個人的にはラストのエピソードはいらないんじゃないかと思うのだけど…。あの話のおかげで一気に現実味が希薄になった気がする。それが少し残念かな。