『祈りの海』

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF) グレッグ・イーガン (早川書房 ハヤカワSF)
噂のイーガン、今頃初読。短編集。


解説にもある通り、そのほとんどがアイデンティティーに関するテーマ。
例えば、目覚める度に別の人間に意識が転移してしまう男を描く『貸金庫』や、脳にバックアップとしてのニューロンチップを埋め込み、老化する前に「スイッチ」するのが常な世界を描く『ぼくになることを』など。正直言って全体的にそんなに食指を動かされるものはなかったかな。表題作の『祈りの海』は比較的面白かった。設定がいいね。でもコヴナントなんて名前の、海をクローズアップした惑星の名前を見るとどうしても『ハイペリオン』のマウイ=コヴェナントを思い出してしまう。
逆の意味で強烈に印象に残っているのが『キューティ』。子供が欲しい男が愛玩生物「キューティ」(ほぼヒトなんだけど遺伝子操作である年齢に達すると死ぬようになっている)を買い求め、育てる話。生理的な嫌悪を憶えた。


私の好みじゃないんだろうか。とにかく『宇宙消失』は買ってあるので、これだけでも読んでみることにしよう。こっちは長編だし。