『ハローサマー、グッドバイ』

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫) マイクル・コーニイ (河出書房新社 河出文庫
毎年夏になると沿岸の街にある別荘に出掛けるドローヴの一家。彼は今年の休暇を楽しみにしていた。去年、そこで出会った少女ブラウンアイズにまた出会えるからだ。海の街パラクーシで紡がれる少年少女の恋。しかし時は戦争の時代。平和に思えたパラクーシにも徐々に戦争の影が落ちてくる…。


恋愛小説です。ただし地球に似た惑星のヒトに似た異星人が繰り広げるお話、だけれど。


非常に話に入り易く、読み易かった。
多分人物描写が上手い所為。ブラウンアイズの可愛さはもちろんのこと、自分の息子にふさわしい(と勝手に思う)友人を連れてくるドローヴの母親だとか、その件の友人の虎の威を借る狐っぷりだとか、ホントに上手いと思う。
そして背景も良い。ヒトの心に感応する能力を持つ謎の生物ロリンを始め多様な生物が出てくる。この多様性は物語上重要な位置を占めるグルームという、海水が蒸発して粘度が増す現象とも関連している。
そして徐々に物語に暗い影を落とす戦争。
本当に書き方が上手いんだろうなあ。話の展開がすんなりと心に入ってきたし。内容はもちろん面白いんだけど、そんなところにも感心してしまった。