『イルーニュの巨人』

イルーニュの巨人 (創元推理文庫) C・A・スミス (東京創元社 創元推理文庫
幻想的怪奇譚の短編集。中世ヨーロッパを彷彿とさせるファンタジックなものもあればSFもありと、その幅は広い。


C・A・スミスと言えば創元文庫巻尾にある著者写真付きの作品紹介において、ラヴクラフトと並び怪奇小説の雄として子供の頃から近寄りがたい雰囲気があった。そもそもクトゥルーとか不気味で好きじゃなかったし。いや、作品は読んだことがないのだからラヴクラフトの顔写真と解説文の雰囲気が不気味だったのかもしれない。…まあともかく良い印象は持ってなかったわけだ。横に並ぶC・A・スミスも含めてね。
しかし今回復刊タイトルに載っていた作品紹介を見ると面白そうだったので、読んでみたわけ。


結論から言うと単なる読まず嫌いだったわけで、まず文章が幻想的でものすごく雰囲気が出ていて素晴らしい。古いものでは70年近く前の作品もあって多少古くささを感じなくもないけど、文体と相まって雰囲気は良い。SFよりは中世ヨーロッパ的世界を舞台にした話の方が雰囲気とマッチしていて好きだな。予想以上に楽しめた。
クトゥルーの記述もあったけど、あまり気にしない方向で。