『シャングリ・ラ』

池上永一　（角川書店　角川文庫）
悪化する地球温暖化を改善するべく導入された炭素経済。炭素排出国に対してその排出量に応じた税を課すそのシステムに対応するために政府は東京の森林化を決定。代わりに人々は超巨大積層都市アトラスに移住を開始した。しかし全ての人がアトラスへ移住できるわけでもなく、地上に残された人々は貧困の中、森に集落を築き反政府組織を構築する。
少年院から戻った少女、國子は反政府組織の総統の座を引き継ぎ、反政府運動に身を置いてゆく。

やっぱりこの人の作品は登場人物が異彩を放ってるわ。しかも大抵準主役級の人達。反政府組織で國子の親代わりを務めるニューハーフのモモコ。同じくニューハーフだが美人のモモコとは違い巨漢で泣き虫のミーコ。アトラスで重要人物扱いを受けている美邦とその警護にあたる女医、小夜子。炭素経済の盲点を突くプログラム、メデューサを開発する少女香凛と仲間達。そして小夜子の後に赴任してくる涼子。…ほとんど女性。

上巻はゆっくりと進むが下巻に入ると怒濤の展開。そして下巻に入ってから登場した涼子のとんでもなさにつられるように小夜子やモモコもヒートアップ。殺しても死なないような人達のオンパレード。もうなんでもありって感じ。終わってみれば『レキオス』と同じような構成だけれど、イッちゃってる登場人物が多く、炭素経済という視点も面白くて、厚みとしてはこちらに分があるかな。
そして母は強し、てとこか。