『戦う司書と追想の魔女』

戦う司書と追想の魔女 (スーパーダッシュ文庫) 山形石雄 (小学館 スーパーダッシュ文庫
若く正義感の強いヴォルケン。しかし武装司書としての初陣にして神溺教団との闘争の幕開けとなったとある事件に関わった時から、彼のハミュッツへの疑心が生まれる。ハミュッツを代行の座から追い落とすために彼は証人となり得る女性との逃避行に出る。


対立するはずの武装司書と神溺教団の関係が明らかになってきた。そしてその秘密を知るのは上層部の一部の人間のみ。それを知らないヴォルケンはひたすらに正義という理想を追い求める。必要悪を受け入れられない彼は高貴なのか、幼いのか。


しかし毎回思う武装司書のいまいちな結束感というのは長であるハミュッツの所為なんだな。司書内での彼女に対する反感不満が多いこと。秘密の漏洩を防ぐための強さ。それだけが図書館館長代行に要求されるものなのか。逆に言えばそれ以外はどうでもいいと。彼女以外の司書達のヴォルケンに対する同情や応援が身に染みる…。


ヴォルケンと並び今回の主役であるレナス。モッカニアに対する切り札として送り込まれた、別人格の記憶を植え付けられた彼女の中の真の人格が失われた記憶を求める話でもある。記憶を取り戻した彼女は神溺教団の有り様を大きく変え、今後の物語のキーパーソンとなる…はず。