『温かな手』

温かな手 (創元推理文庫) 石持浅海 (東京創元社 創元推理文庫
人間のエネルギーを摂取し糧とする謎の生命体、ギンちゃんとムーちゃん。しかし外見は普通の人間と全く変わらない(いや、強いて言えば美男美女)。そんな彼らが共同生活を送る(端的に言えば宿主)寛子と高西の身の回りで起こる事件を鮮やかな推理で解決してゆく。


氏の作品、読むのは2作目だが、状況の描写がとても丁寧だと思う。そこがこれまでのミステリ作品とはちょっと違和感があって、「あ、これは後々重要な点なんじゃないのか」と勘付いてしまうんだな。まあ、読者にきちんと情報を提示してくれる訳だから悪いことではない。解説を読むと石持浅海という作家の作品は他のミステリと比べると変だ、みたいなことが書かれているが推理の過程も論理的に進められていて良いと思うんだが。
個人的にはSFチックな設定も合わせて好き。


共同生活者の過剰な摂取カロリーを生命エネルギーとして摂取してくれるギンちゃんとムーちゃん。盛んにダイエットが叫ばれるこの世の中では随分と重宝される存在なんではなかろうか。逆に言えば彼らがいる生活に慣れてしまった人間は、彼らがいなくなった時とんでもない自堕落な生活態度になってしまうんじゃないかと、そんなところに興味を憶える。
それだけじゃない、寂しさも感じるんだよ、と作中では描写されてるわけだけれどね。