『戦う司書と世界の力』

戦う司書と世界の力 BOOK10 (スーパーダッシュ文庫) 山形石雄 (集英社 スーパーダッシュ文庫
バントーラ図書館地下迷宮からルルタの力によって放たれた"終章の獣"。その力で世界中の人々は倒れ、ハミュッツすらも死んだ。しかし彼女の隠されていた能力が今発動し、ルルタとの世界の命運をかけた最後の戦いが始まる。


もうね、前巻からルルタの存在感が圧倒的。救世主と崇め奉られ、魔王として恐れられる彼は神に匹敵する力を得ながらも実は誰よりも人間的なのではないかと。ただニーニウへの愛だけを胸に世界に挑む。「世界を滅ぼせるのは、全てに勝る愛だけなんだ」。『塩の街』の入江の科白と言ってることは真逆だけれど、奇しくも本質は全く同じ。
そしてそんなルルタを倒すためだけに"道具"として作られた"菫色の咎人"チャコリーとハミュッツ。その悲惨さは人間爆弾であるコリオらにも匹敵する。…アンパンマンを倒す為だけに生まれて来たバイキンマンが思い浮かんだ。そのバイキンマンドキンちゃんやホラーマンらの仲間やアンパンマン達との戦い(?)のなかで恐らく変わっていっているはず。同様にチャコリーは"道具"としての働きは失敗に終わったが最後にルルタへの思いやりという大切なものに気づく。武装司書として生きて来たハミュッツは"道具"として生きる以上の大切なものを得られたのか…?


最終巻だけあって、これまでになく序盤からハミュッツは主人公っぽく戦い、これまで死んでいった人々も登場する。数々の伏線を回収し、希望のあるラストを提示したその手腕に天晴。