『告白』

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1) 湊かなえ (双葉社 双葉文庫
ある中学の一学期終業直前。1年生の担任の子供がプールで死体となって発見される。警察では足を滑らせてプールに落下した故の事故死であると断定されたが、母親である担任は終業式の日、クラスの生徒たちの前である「告白」を始める。それはクラスの中に娘を殺した犯人がいる、という告発……。


本屋大賞受賞の話題作、ようやっと読了。


しかしなんというか、陰湿で後味の悪い作品だ。面白くなくはないんだが、印象がなあ。第1章なんて、同じ年頃の娘を持つ親の身としては、読み進めるのが非常に辛かった。こんな調子では読めないぞ、と思ったが章毎に視点、というか語り部が異なるので娘を殺された悲しみや怒りというものは多少薄れる。


この作品のテーマは、母親の存在とその子に注ぐ愛情、なのか。娘を殺された教師、殺人犯となった息子を(そうと知らず)溺愛する母親、息子を捨て自分の道を選んだ母親。3人の母親が登場し、教師はもちろん、(かなりうざいが)息子を溺愛する母親の気持ちもわからんではない。しかし、やりすぎなんじゃないの?と思ったりもするが、現実でも教師がモンスターペアレンツを訴えたりするわけだから、学校って所は私らの子供の頃とは随分と違った所になってしまったようだ。こういう作品を読むにつけ、子供の将来が不安でならない。そして私らもどういう親になるのか…。


同じく教師の復讐譚として少し前に読んだ『そして粛清の扉を』と比べてしまうが、個人的にはあちらの方が好みかも。『そして粛清の扉を』の方が破天荒ではあるが(何せバッタバッタと生徒たちを殺していくのだから)、それでもラストには救いがあった。一方でこちらはなあ。…なんともすごい話だよ。


こうなると、やはり似たような話である(と思う)『悪の教典』の文庫化が楽しみだ。