『ゆらぎの森のシエラ』

ゆらぎの森のシエラ (創元SF文庫) 菅弘江 (東京創元社 創元SF文庫)
塩を含む濃い霧が立ちこめ、異形の怪物が徘徊する森。付近の村人たちは怪物を恐れながらの生活を強いられたいたが、守護神リュクティの出現に精神的に救われ、彼女の像を建立することに。そんな折、自我に目覚め創造主への復讐を誓う怪物、金目は紫の瞳を持つ少女シエラと出会う。


久しぶりに読む氏の作品。
ファンタジーかと思いきや、それだけではなく、SFでもあるし、童話的でもある。環境問題も取り込み、随分と意欲的な作品だなあという感じ。
これが刊行された当時、環境破壊とか、もうメディア等で広く取り上げられてたんだったっけ。まだそれ程騒がれてなかったような気がするのだが。そういった視点と共に怪物が主役という設定が面白い。仮面ライダーみたいな。
ま、ホントの主役は別にいるんだけど。


もう一つ面白いのがリュクティの存在。守護神と畏れ奉られてはいるものの、その姿は怪物そのもの。村人の前では毅然とした態度をとる偽りの「守護神」であるが、創造主の前では彼に媚び、美しい女性として隣にいることを望む「女」。そのリュクティが終盤に向けて「女」丸出しになっていくのが滑稽であり、報われないその想いが哀れ。