『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S>』

ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成<S> (創元SF文庫) 大森望 編 (東京創元社 創元SF文庫)
以前ハヤカワから出た『ゼロ年代SF傑作選』はゼロ年代を象徴するような作家さんの作品を集めた、という感じのものだったが、こちらはゼロ年代に発表された作品の中からこれぞというものを集めた、という感じ。だからちょっと毛色が違う。


作品自体は「五人姉妹」以外は初読。作家さんも半分程が始めて読む人。
「嘔吐した宇宙飛行士」が面白かった。あまりの描写に読んでて吹き出しそうになってしまった。おバカな展開なのだが、実は深いのかもしんない。
「鉄仮面をめぐる論議」は悲しい話。氏の作品は初期の<ブギーポップ>以来久しぶりに読んだが、これは背景がちょっと気になる。
以前から気になっていた「魚舟・獣舟」もなかなか。確かにこれだけのページ数でこの世界観を見せつけられるとは。
「幸せになる箱庭」と「ラギッド・ガール」はオチへの設定の使われ方が似ているなあ、と。
「大風呂敷と蜘蛛の糸」は余計な描写を省いた、記録もののような印象を受ける。プロジェクトXみたいだな。それだけに新たな領域へと挑戦する気持ちの強さが伝わってくる。

<F>の方も楽しみだ。