『ハーモニー』

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) 伊藤計劃 (早川書房 ハヤカワJA)
身体の中に入れられた医療分子。それは体内から人の身体に関する情報を収集しサーバーに送ることで、人の健康を管理する。そのおかげで病気はおろか、ちょっとした頭痛や風邪、肥満などといったものですら撲滅され、「死」が遠くなった未来。肉体的にも精神的にも管理される世の中に、少女たちは抵抗を試みる。


賢しく友人を諭す少女、御冷ミァハ。彼女の友人である零下堂キアンと、主人公、霧慧トァン。どうも彼女たちの関係が『ルー=ガルー』を思い出させた。
そしてテキスト。HTML(作品ではETMLだが)タグで強調される文章に、これは、と思っていたのだがなるほど、そういうことだったか。


解説にある著者の言葉のように、『虐殺器官』とテーマ的に似ていると感じた。そして意識とは何かについて考えさせられる。動物には意識がないのか?意識がなくなっても普通に生活ができるのか?その辺りは疑問だが、物語ラストは『幼年期の終わり』を彷彿とさせた。それは人間という種全体でみれば進化なのか?個の人間でみたらどうなのか?動物に意識が無いというのであれば、それは動物に戻るということではないのか?…疑問は尽きない。


しかし、病気の撲滅はまあいいとしても、精神的に有害であると見なされる映像などからも守られてるというのは、ものすごい過保護だと思ってしまう。
実際この世界はそのような所まで突っ走ってしまうのだろうか。