『ラッシュライフ』

ラッシュライフ (新潮文庫) 伊坂幸太郎 (新潮社 新潮文庫
5つの物語が仙台を舞台に交錯する。
1つ。拝金主義の画廊経営者と彼に引き抜かれた新人女流画家。
2つ。勤めていた会社をリストラされ再就職に向けて面接を繰り返すも、 不採用の通知を受けた会社は40社に登る。そんな彼がふとしたきっかけで手に入れた野良の老犬と一丁の銃。
3つ。お互い妻と夫がいながらも不倫を続ける男と女。彼らはお互いの配偶者の殺害を企てる…。
4つ。孤高の泥棒。特有の美学を持つ彼は空き巣に入った家に、盗んだ物、恨みは無いこと、等の書類を残して去ってゆく。そんな彼が旧友と出会った場所は…?
5つ。不思議なカリスマを持つ男を中心に集まる新新興宗教団体。彼の”神性”に近づく為に”神の解体”を目論む信者。


これらのうちメインに語られるのは2つ目以降のもの。これらの背景にあるバラバラ殺人事件と、バラバラになったはずの死体がくっついて蘇る、という噂。物語が進むにつれてこれらの関連が見えて来るのが面白い。さしずめ、この死体のようにバラバラの物語がくっついて、一つの大きな物語を作るってところかな。
バラバラ殺人事件とはいうものの、そんなに猟奇的なイメージはなく、むしろエンディングは清々しい。氏の文体のせいかもしれない。
著者近影と作品の雰囲気が合っていて、彼の作品は結構好き。