『レキオス』

レキオス (角川文庫) 池上永一 (角川書店 角川文庫)
沖縄を舞台に繰り広げられる魔術師千年王国建国の野望。そのために必要な、強大な力を持つ地霊”レキオス”。”レキオス”を巡り、女子高生、米軍、CIA、占い師その他諸々が入り乱れ、”レキオス”復活の阻止へと乗り出すが…。


作者が沖縄出身であるため随所に沖縄語が散りばめられており、登場人物が生き生きとしている。中でもポーポーというお菓子(どんなものかは謎)を屋台で売る二人のオバァが良い。「お祝いだからねー、お祝いだからねー」のかけ声と共に屋台で現れ、ショバ代を払っていないがためにヤクザにボコボコにされても例のかけ声と共にお菓子を売り始める。そして食べた人達を幸せにする。何がお祝いなのかも謎だがいい味だしてる。こういう人達がほんとに良く描けている。また逆にイッちゃってるのが人類学者のサマンサ。「知性と痴性は紙一重」なヒトで、ずば抜けた知性を持ちながらも趣味はコスプレ。しかも変態。暴走しちゃってます。
一見読者置いてけぼり的なストーリー展開なのだけど、最後にはきっちり全てのピースがはまる爽快感。そしてなにより登場人物の個性が抜群で、楽しめた。


舞台が沖縄だけあって、米軍問題にも多少触れている。米軍人を父にもつクウォーターである主人公、デニスの視点では、沖縄の基地は「我が家」であり、基地がなくなることに不安を抱いている。一方友人である日本人は基地の借地料で生活していながらも基地が無くなってほしいと高校生ながらに考える。大人達が考える「沖縄基地問題」ではなく、今を生きる子供の観点からの「沖縄基地問題」を垣間見たような気がした。


とはいえ、全体的に重い雰囲気ではなく、むしろ軽い感じがした。「タイムボカン」シリーズ的な印象。分厚いけどそんなに身構えないで読めるよ。