『ねじの回転』上下

　恩田陸　（集英社　集英社文庫）
時間遡行が可能となった未来。国連はその技術を用いて過去への介入を図るが、その結果として人類を悲劇が襲う。各国の歴史的事件を正史通りに再生し「確定」することで、事態の是正を試みる。そして日本で選ばれたポイントは1936年2月26日、2・26事件。事件は歴史通りに再生されるのか？そして人類の未来は？

過去の歴史を正史通りに再生するために選ばれた３人の陸軍士官たちと、未来から来た人間たち。彼らの思惑の違いが興味深い。確かにもう一度過去をやり直せるとわかれば、良い方向に直したいと思うだろう。それを悲劇に終わることがわかっていて正史通りに事を進めろ、というのは酷な話だな。そんな陸軍士官たちの葛藤が悲しい。

なんかいろいろ考えるとタイムパラドックスとか時間軸の流れとか大丈夫か？と思うけど、深く考えなくてもストーリーを楽しむのが良いのかな。それが恩田氏の本を読む楽しみかと思う。
しかしもともとの事件の発端が「聖なる暗殺」という過去への介入であって、まあ、ドイツの有名な例の人の暗殺だったわけなんだけれど、「過去を変える」＝「例の人の暗殺」というのは平凡かなーと少し思ったり。