『凍りのくじら』

凍りのくじら (講談社文庫) 辻村深月 (講談社 講談社文庫)
芦沢理帆子、高校生。写真家の父親は5年前に失踪。そして母親は癌で長期の入院。そんな彼女は父親の影響で「ドラえもん」をこよなく愛しており、周囲の人間の個性に対して「SF=すこし・不思議」をもじった名前を付けていた。友達付き合いはそつなくこなすものの、自分を出し切れない自分自身につけた「SF」は「すこし・不在」。上級生の別所あきらとの出会いが少しずつ彼女を変えてゆく…。


中盤くらいまでなかなか物語に入り込めずちまちまと読んでいたが、物語が動き出してからは引き込まれ、そして驚きと感動のラスト。普通の青春小説だと思ってた。それこそ理帆子のように舐めてたわけだ。
なるほど、こういう作風の人なのか。


主人公である理帆子のスタンスには共感できる部分が多い。私も友人は少なくはないが、自分をさらけ出せる、親友と呼べる人間が果たして何人いるかと思うと不安になることもある。舐めてる訳ではないが、自分自身をさらけ出すのが怖いのかな。ええ格好しぃなのか。不器用なのか。


とにかく。当初の予想より面白かった。これは他の作品も楽しみだ。