『BG、あるいは死せるカイニス』

BG、あるいは死せるカイニス (創元推理文庫) 石持浅海 (東京創元社 創元推理文庫
全ての人間は女性として生まれる。その中で一部の優秀な者だけが男性へと性転換を遂げる世界。男性化が有望視されていた優子が校内で殺される。嘆き悲しむ妹の遥だが、犯人を探し出すことを誓う。そんな折、またしても学校で生徒の死体が発見され…。


石持浅海
何より設定が面白い。優子は姉なのだが実際には遥の父親が男性化する以前、女性の時に産んだ子供という設定。なまじ舞台が日本で表面上は我々の世界と全く変わらないので基本設定を忘れてしまうこともしばしば。
そして個人的に気になったのが性転換のしくみ。この世界では女性がXX型、男性がXO型なのだとか。Y染色体はいらないのね。ということで外見は私らと同じでも随分と違っていそう。


ミステリとしては遥の推理の過程や伏線も丁寧に書かれていて読者に優しい印象。しかしそれは優子の秘密を暴くまでで、肝心の犯人の告発の段になるとやや唐突な気がした。まあ、BGの類稀なる能力を示す演出なのだろうが。


読んでいてなんとなく『Jの神話』を思い出した。あっちはY染色体万歳な話だけれど。