『宇宙船ビーグル号』

宇宙船ビーグル号 (ハヤカワ文庫 SF 291) A. E. ヴァン・ヴォクト (早川書房 ハヤカワSF)
理系文系問わず各分野の科学者と、彼らを補佐し船を動かすための軍人を乗せた宇宙船ビーグル号。深宇宙へと探検を続ける彼らに様々な怪物(宇宙人)が襲いかかる!


昔の作品って少々読み難い。その上、子供に泣かれたりしてしょっちゅう中断してると内容が頭に入り難いんだ。そんなわけで随分時間がかかった。


それはさておき、面白かった。
4つの短編に加筆して1つの長編にまとめたという代物らしいのだが、そのうちの2編は怪物視点での語りが多い。そこが興味深い点。
もう一つは、そういった難関に遭遇するたびに科学者達が会議を開き対策を練るのだが、生物学や化学、物理学のみならず、社会学や考古学などの学問も大層重要な役を担っている点。なかでも人間側の主人公であるグローヴナーは情報総合学という新領域の学問を専攻しており、初めは他の科学者達からの扱いもぞんざいなのが、困難のたびに自分の地位を確立していく過程も面白い。科学者といえども政治と無関係ではいられないのだ。
ま、異なる学問の情報統合なんて今でこそ珍しくもないけど(とはいえ、なかなか古いしがらみは簡単には取り除けなさそうだが)、出版当時としてはなかなかに斬新だったんではなかろうか。


宇宙に棲まう怪物達にしてみれば、せっかく手に入れた餌や繁殖の機会を逃してしまうわけだから、残念なことだ。