『ぼくのメジャースプーン』

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫) 辻村深月 (講談社 講談社文庫)
成績優秀、スポーツ万能、しかし特定の友達が居らず、いつもひとりぼっちの女の子ふみちゃん。小学校で飼っているうさぎの飼育係になり、大層喜んでいた彼女を突然の悲劇が襲う。そのショックで心を閉ざしてしまった彼女を助けたいぼくは「力」を使うことに決めた…。


主人公が持つ不思議な「力」。それは他人を操る呪いの声。…なんて書くとおどろおどろしいが、「○○しなければ△△なことになるぞ」と深層心理に脅すことによってある行動をさせるというもの。
ああ、氏の作品にはなにかしらの少し不思議な要素が入ってくるのかな。そして各作品間でのリンクも特徴のようだ。『凍りのくじら』にちょこっとだけ出ていたふみちゃんにまさかこんな背景があったとは驚きだけれど。


話のほとんどは、この「力」の使い方を教わるという名目で、主人公の親戚であり大学教授である男性との会話で進む。そしてこれは否応なく巻き込まれた犯罪に対してどう向き合うか、その犯罪者を許すことができるのか、復讐は許容されるのかといった議論でもある。小学生相手の会話ながら、なかなかに深い。
そして主人公。小学4年生でありながら、随分としっかりしている。主人公の母親がふみちゃんをして「みんなより少し大人なんだね」と言うように、主人公も同級生よりも大人なんだろう。


この歳にしてそこまで大切に思える人がいるっていうのは素晴らしいことだ。この先も二人には仲良くしていってもらいたい。