『レインツリーの国』

レインツリーの国 (新潮文庫) 有川浩 (新潮社 新潮文庫
会社務めの青年、向坂が学生時代に読んだ思い出の本を通じてネットで知り合った女性、ひとみ。彼女の紡ぐ言葉に惹かれた向坂はメールのやり取りの後、彼女との初デートに持ち込むことに成功。そして初めて会う二人。緊張感だけでは説明できない微妙にちぐはぐな会話。そして彼は知ることになる。彼女が聴覚に障害を持つことを…。


純粋に恋愛もの。ページ数はそんなにないが、内容は濃い。


人は結局他人の悩みについては(障害があろうとなかろうと)、想像することはできても完全に理解することはできない。だからお互いに歩み寄ることが必要で、コミュニケーションが大事になってくる。そういった意味で本書の半分程を費やすメールでのやり取りという書き方は功を奏していると思う。言葉よりも文章の方が整理できるから相手に気持ちが伝わり易いのではなかろうか。それと、向坂の書き言葉で表される関西弁は少々鼻につく(いくら関西人でも文章を関西弁で書く人って、そうはいないでしょ)のだが、思ったことをズバッと言える関西気質も役立っているのだろう。
…念のために書いておくと関西弁が嫌いな訳ではない。私自身も生まれは違うが育ちは関西なので、独り言や親兄弟との会話は関西弁だし。寧ろ耳に馴染む方なのだ。


テーマとして聴覚障害を扱ってはいるが、相手を想いやるとか基本的なところは健常者にも当てはまるもの。「障害者だから」とか変に括らなくていいと思うの。氏もそういうことを言いたかったんではないかと。
まあとにかく。苦労している人はどうしても応援したくなるので、若い二人に幸せになって欲しいと願ってしまうのだ。


しかし『妖精作戦』懐かしいな…。