『マルドゥック・スクランブル』

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)
冲方丁 (早川書房 ハヤカワJA)
娼婦としてしか生きることのできなかった少女、バロット。そんな彼女を買い受け、生活の面倒までも見ていた(といっても下心ありありなんだけど)賭博師シェルはしかし彼女の殺害を試みる。瀕死の重傷を負いながらも、委任事件担当官であるドクターとウフコックに助けられた彼女は自分の身を守るため、シェルの犯罪を追いかける…!


噂の『マルドゥック・スクランブル』、ついに読破。手を出したらハマりそうだなあと思いつつちょっと敬遠していたのだが、アニメ化記念で平積みになっていたので買ってしまった訳。やっぱり気になってたんだな。


電子干渉能力を得て死の淵から蘇ったバロットと、彼女を消し去るために雇われたならず者達との激しい銃撃戦。そこから一転してシェルの犯罪に関わる隠された証拠を得る為のカジノでの頭脳戦。動から静への転換。
アクションだけでなく、今まで物として扱われ続けたバロットの心情。その、圧倒的な力を得たことによる暴発。そこから立ち直り未来へ向けて歩き始める姿勢なんかも良く描けてると思う。
一方でバロットを追う立場にあるボイルド。彼も心に傷を負っている。しかし彼は過去にとらわれ続ける。
ウフコックも含め彼らに共通するのは秘匿性の科学技術により成り立っている自分たちの「有用性」を示すこと。それは「存在意義」であり、バロットのそもそもの「何故私なのか」という問いにに帰結する。彼らのような特殊な立場でなくても人は皆、存在意義を求めているのだ。


主人公は可愛い女の子。しかし圧倒的にキャラが立っているのは、喋るネズミ型万能兵器であるウフコック。シェルが雇った事件担当官であるボイルドとは過去に因縁があり、ウフコックを使う(パートナーである)バロットと、ウフコックを奪おうとするボイルドの間で三角関係?的な様相を呈すのが面白い。噂のカジノシーンもルールは良くわからないものの、緊迫感が感じられて楽しめた。ずっと「カウボーイ・ビバップ」の第3話がイメージされ続けたが。


マルドゥック・ヴェロシティ』も楽しみだ。