『ティターンズの旗のもとに』

ティターンズの旗のもとに〈上〉―ADVANCE OF Z (メディアワークス文庫) ティターンズの旗のもとに〈下〉―ADVANCE OF Z (メディアワークス文庫) 今野敏 (メディアワークス メディアワークス文庫
UC80年代。「デラーズ紛争」を契機に地球連邦軍は、ジオン残党狩りを目的としたエリート集団"ティターンズ"を結成する。その"ティターンズ"内の新型MS開発に関わる実験部隊に配属されたエリアルド・ハンター中尉は、数々の戦場を乗り越え「グリプス戦役」を生き残るが、軍紀違反を犯したとして軍事裁判にかけられることに。しかしそれは行き過ぎた"ティターンズ"の所行を葬るための、有罪前提の裁判だった。彼の無罪を確信した弁護人であるコンラッド・モリス少佐は、調査を開始する…。


珍しくも裁判を主軸に置いたガンダム小説。現在(UC0088)におけるコンラッドの裁判弁護人としての奮闘と、過去(UC0083~0088)におけるエリアルドらマーフィー小隊の「Zガンダム」のストーリーに則したジオン残党やエゥーゴとの戦闘が交互に語られる。


「Z」や「0083」だけでなく「センチネル」すらもストーリーの下敷きにしているのが妙味深い点。まあ言われてみればTR-6はスペリオルにシルエットが似てるかも。
そしてUC0088という第一次ネオジオン抗争が激化する時代(「ガンダムZZ」で描かれた頃)に裁判なんてのんびりやってるんだなあ、という印象。ああでもTVで観てれば「Z」から「ZZ」は繋がっていて変わらず戦闘やってるけど、歴史的な観点からすれば「グリプス戦役」が終わって後のしばらく、ハマーン・カーンが地上に降りるまでは局地戦くらいで、連邦もそんなに本腰入れてないってことなのかな。


文芸作家の書くガンダムとして、福井晴敏氏の『ガンダムUC』と比べられるかもしれないが、「電撃ホビーマガジン」誌上での連載がスタートしたのはこちらが先。そして尚も比較するとガンダム世界の用語や設定を再構築し、詳しく書いてみせた『ガンダムUC』はガンダムに左程興味がない人が読んでも耐え得る作品と言えるかもしれないが、こちらは少なくとも「Zガンダム」と「0083スターダストメモリー」くらいは観ておかないと、背景までの内容把握は難しいと思う。「Z」のサイドストーリーであるという前提があるからなのかもしれないが。
ま、要するにガンダム好きな人のための本であって、ガンダム知らないけど今野敏氏のファンだから読んでみよう、という人向けではないということか。


なんだかんだ言ってもガンダム好きだから、結構楽しめたんだけどね。
ダンディライアン、キット化しないかしら………無理、だよな。