読書感想記

『とある飛空士への追憶』

犬村小六 (小学館 ガガガ文庫) 大洋とそこを横断する大瀑布に分たれた大陸。そこに位置する二大国は戦争状態にあった。戦況の悪化に伴い占領地にいる皇子の許嫁を本国へと連れ帰る命令が下される。それはたった1機の飛空機で敵制空権内を突破するという無…

『新しい太陽のウールス』

ジーン・ウルフ (早川書房 ハヤカワSF) 共和国の独裁者となったセヴェリアン。太陽の衰えたウールスに<新しい太陽>をもたらすべく宇宙船で旅立つ彼を待ち受けるものとは…? 前巻で「セヴェリアンが独裁者となりウールスに<新しい太陽>をもたらすでしょ…

『秋の牢獄』

恒川光太郎 (角川書店 角川ホラー文庫) 3つの中編を収録。表題作が時間ループものだったので興味を持ち、読んでみる。氏の作品は初めて。ホラーのジャンルはどれもこれも似たり寄ったりのような気がして、なかなか手を出し難くってねえ。 収録作全てが本…

『独裁者の城塞』

ジーン・ウルフ (早川書房 ハヤカワSF) 北方山岳地帯をさまよい、ついに隣国のアスキア人との戦闘地域に入ったセヴェリアン。熱病にうなされながら辿り着いた野戦病院でペルリーヌ女僧団に出会う彼だが、成り行きから戦闘に参加することに…。 シリーズ第4…

『警士の剣』

ジーン・ウルフ (早川書房 ハヤカワSF) 旅の果てに目的の地スラックスに着いたセヴェリアン。しかし執政官の願いを聞き入れずにとある女性を助けたことから、またしても街を負われる羽目に。スラックスまでの旅の途中で偶然手に入れた神秘の宝石<調停者の…

『調停者の鈎爪』

ジーン・ウルフ (早川書房 ハヤカワSF) セクラを愛し、それ故に拷問ではなく安らかな死を与えてしまったセヴェリアン。<塔>を追放された彼は、北方の街スラックスで刑吏として働く為に旅に出る。その過程で知り合う人々。彼の運命を変えたもう一人の人物…

『拷問者の影』

ジーン・ウルフ (早川書房 ハヤカワSF) 中世的世界で拷問者組合の徒弟として暮らすセヴェリアン。彼らの住まう<塔>に送られてきた人物に対して速やかに、組合に伝わる秘術をもってして拷問するのが彼らの役目。ある日、彼は<塔>に連れて来られた一人の…

『冷たい校舎の時は止まる』

辻村深月 (講談社 講談社文庫) 雪の降りしきるある朝。通常通りに登校した高校3年生の男女8人はしかし、鍵も開けられ電気もヒーターまでも点いた校内に自分たち以外に誰もいないことを知る。しかも1階の出入口、窓は鍵もかかっていないのに全く開かない…

『虎よ、虎よ!』

アルフレッド・ベスター (早川書房 ハヤカワSF) ある時、一人の学者によって偶然発見されたテレポーテーション能力。その能力が一般的に普及した25世紀、それは発見者の名前をとって"ジョウント"と呼ばれるようになっていた。画期的に思える"ジョウント"は…

『ティターンズの旗のもとに』

今野敏 (メディアワークス メディアワークス文庫) UC80年代。「デラーズ紛争」を契機に地球連邦軍は、ジオン残党狩りを目的としたエリート集団"ティターンズ"を結成する。その"ティターンズ"内の新型MS開発に関わる実験部隊に配属されたエリアルド・ハンタ…

『エロス』

広瀬正 (集英社 集英社文庫) 歌手橘百合子として芸能界で成功した赤井みつ子。芸能生活37周年のリサイタルに向けたある日、ふとしたきっかけで「もしあの時歌手になっていなかったら…」という自分の人生を想像し始める。 全然エロくないです。念のため。 …

『ゾティーク幻妖怪異譚』

C・A・スミス (東京創元社 創元推理文庫) 太陽の衰えた未来の地球。そこに存在する大陸ゾティークを舞台にした、魔術師や妖術師、王侯貴族や魔物が入り乱れる短編集。 『イルーニュの巨人』の時にも感じた言葉の巧みさ、退廃した妖しい世界を綴る修飾語の…

『マルドゥック・スクランブル』

冲方丁 (早川書房 ハヤカワJA) 娼婦としてしか生きることのできなかった少女、バロット。そんな彼女を買い受け、生活の面倒までも見ていた(といっても下心ありありなんだけど)賭博師シェルはしかし彼女の殺害を試みる。瀕死の重傷を負いながらも、委任事…

『戦う司書と世界の力』

山形石雄 (集英社 スーパーダッシュ文庫) バントーラ図書館地下迷宮からルルタの力によって放たれた"終章の獣"。その力で世界中の人々は倒れ、ハミュッツすらも死んだ。しかし彼女の隠されていた能力が今発動し、ルルタとの世界の命運をかけた最後の戦いが…

『ガーディアン』

石持浅海 (光文社 光文社文庫) 小学生の頃に父親を亡くした勅使河原冴。それ以来彼女に危険が及びそうになると、周囲にバリアが有るかの如くその危険から彼女を守ってくれる「力」を感じるようになる。「ガーディアン」と彼女が名付けたその力は、彼女に危…

『配達あかずきん』

大崎梢 (東京創元社 創元推理文庫) 駅ビル6階にある書店、成風堂。そこで働く杏子とアルバイトの大学生、多絵。彼女達が客の持ち込む本に関する謎を解き明かす。 所謂"日常の謎"ってやつ。北村薫、加納朋子氏らに連なる新人登場、てところかな。しかし日…

『レインツリーの国』

有川浩 (新潮社 新潮文庫) 会社務めの青年、向坂が学生時代に読んだ思い出の本を通じてネットで知り合った女性、ひとみ。彼女の紡ぐ言葉に惹かれた向坂はメールのやり取りの後、彼女との初デートに持ち込むことに成功。そして初めて会う二人。緊張感だけで…

『誰か』

宮部みゆき (文芸春秋社 文春文庫) 大会社会長の娘と結婚し、今はその広報室に身を置く杉村三郎。ある日彼は舅である会長から、先日事故死した彼のお抱え運転手の娘達の願いを訊いてくれないかと頼まれる。件の運転手は自転車に撥ねられ、頭の打ち所が悪か…

『戦う司書と絶望の魔王』

山形石雄 (集英社 スーパーダッシュ文庫) バントーラ図書館館長代行と数人の武装司書、そして神溺教団トップしか知らず、世界からひた隠しにされていた「天国」の存在。その正体は図書館館長であるルルタ=クーザンクーナ。突如として世界を滅ぼすために動…

『ディファレンス・エンジン』

ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング (早川書房 ハヤカワSF) 差分機関<ディファレンス・エンジン>。実際には完成しなかった蒸気で駆動する歯車式コンピュータ。それが完成し、蒸気機関が文明の基盤を成す架空の19世紀イギリス。史実に登場する…

『MM9』

山本弘 (東京創元社 創元SF文庫) 怪獣が災害と同じように現れる世界。彼らの出現予測、対処法等の怪獣対策のエキスパート、それが気象庁特異生物対策部、通称<気特対>の面々だ。攻撃部隊である自衛隊への情報提供のため、怪獣が現れれば最前線に赴く、そ…

『虐殺器官』

伊藤計劃 (早川書房 ハヤカワJA) 米国軍特殊部隊に属するクラヴィス・シェパード。彼の部隊は紛争地域に潜入し、その紛争の原因となる人物の速やかな暗殺を目的とする。そんなエリート部隊の彼らが唯一作戦に失敗し逃がした標的、ジョン・ポール。世界各地…

『終末のフール』

伊坂幸太郎 (集英社 集英社文庫) 8年後に小惑星が地球に衝突すると発表され、人類はパニックに陥る。街に暴徒は溢れ、逃げ場を求めてひたすらに移動する人々。人類滅亡まであと3年となった年、しかしその混乱は沈静化に向かっていた。そんな世の中で暮ら…

『宇宙消失』

グレッグ・イーガン (東京創元社 創元SF文庫) 元警察官のニックは病院から姿を消した脳機能障害を持つ女性、ローラの捜索を依頼される。証言によれば彼女は会話をすることができず、扉すら自分で開けることができない。そんな彼女が監視カメラにも映らずに…

『戦う司書と終章の獣』

山形石雄 (集英社 スーパーダッシュ文庫) 図書館地下迷宮の「本」を侵入者から守るために存在する衛獣。彼らが突如として自分たちのエリアを抜け出し、迷宮の外を目指す。図書館外への流出を阻止すべく奮闘する武装司書。その最中、図書館館長代行ハミュッ…

『戦う司書と虚言者の宴』

山形石雄 (集英社 スーパーダッシュ文庫) 前巻から1年。神溺教団の滅亡によって世界に平和がもたらされ、年に一度の武装司書達の宴が行われていた。その席にはかつて神溺教団の基盤を崩し、武装司書ひいては世界すらも破滅に導く恐れがあるとして、ハミュ…

『温かな手』

石持浅海 (東京創元社 創元推理文庫) 人間のエネルギーを摂取し糧とする謎の生命体、ギンちゃんとムーちゃん。しかし外見は普通の人間と全く変わらない(いや、強いて言えば美男美女)。そんな彼らが共同生活を送る(端的に言えば宿主)寛子と高西の身の回…

『武士道シックスティーン』

誉田哲也(文芸春秋社 文春文庫) 小学生から剣道を始め、中学生の全国大会で2位の成績を誇る(というよりも、2位に甘んじたことを屈辱に思う)香織。彼女は剣道を真剣勝負と捉え「斬る」ことにひたすらにこだわる。一方で剣道を初めて3年。勝ち負けにこ…

『紫色のクオリア』

うえお久光 (メディアワークス 電撃文庫) 毬井ゆかりには自分以外の生物(人間も含む)がロボットに見える。そんな彼女の秘密を知る数少ない友人、波濤マナブが語る彼女と自身の物語。 設定と表紙からして不思議系少女を巡るライトノベルか、なんて思って…

『犬は勘定に入れません』

コニー・ウィリス (早川書房 ハヤカワSF) 時間旅行が可能になり、主に研究目的で使われるようになった未来。オックスフォード大学の史学生ネッドは、第二次大戦中の空襲で焼失したコヴェントリー大聖堂の復元計画に参加していたが、度重なる時間旅行の末に…